税務調査ウラ話BLOG

令和4年1月1日から電子取引については
紙での保存ができなくなります。

令和4年1月1日から電子取引については 紙での保存ができなくなります。

電子帳簿保存法が令和4年1月1日から改正され、従来は電子取引であっても紙ベースで出力して保存することが認められていましたが、来年からは電子取引に係る電子データはそのまま加工しない状態での保存が義務化されます。
電子取引とは、
1電子メール取引
2クレジットカード、電子マネー、QRコード等のキャッシュ決済
3スマホアプリによる決済
4インターネット取引
5EDI取引
6クラウド取引
7従業員の立替経費
従業員が支払先から電子データにより領収書を受領する場合
従来はPDFで保存する場合が多いと思われますが、PDFは加除訂正が可能のため、このままの状態では電子データとしては認められません
電子データはタイムスタンプにより処理するか、クラウドに保存するか、あるいは会社で加除訂正ができないように事務処理システムを作成しなければなりません。
経理処理は従来どおり電子データを紙に出力して処理をしても問題はありませんが、電子データの保存が証拠書類となりますので、必ず保存をしなければなりません。
もし、保存がない場合には、税務調査において青色申告が取り消されることになりますのでご注意ください。
なお、詳しい内容については後日お知らせいたします。

調査ウラ話

現金監査

税務調査の方法には色々な切り口がありますが、昔から「人」、「物」、「金」のいずれかを端緒として深度ある調査を行えば、自ずと結果が出ると言われて来ました。
今回の「現金監査」は正に「金」の領域です。
  
現金商売の会社の調査では、事業の実体を把握するために無予告による現況調査が行われることが多々ありますが、その時、必ずと言ってよいほど「現金監査」も実施されます。
具体的には、調査日当日の現金残高と金銭出納帳の帳簿残高との照合を行い、「調査前日の金銭出納帳の帳簿残高」ー「調査日当日の現金で支払われた仕入や経費+「調査日当日の現金売上高」の検算を行います。
調査日当日の現金残高と一致しますよね?
一致しない!それはおかしいですね。
調査官は、現金残高が少なかったら売上を抜いた後だと思うし、逆に現金残高が多かったら売上を抜く前の状態と想定するでしょう。いずれにしても差額の説明をしっかりと行わなければなりません。
よく苦し紛れに、「代表者への時貸しのお金を返してもらったので現金が多い」とか、逆に「時貸しをしたのを忘れていたので現金が少ない」と開き直る人がおりますが、まさに墓穴を掘っている説明となっています。
もし、そうであるならば、会社と代表者間の金銭のやり取りが恒常的にあるということになりますので代表者個人の預金通帳やカバンの中身までチェックされることになるでしょう。
現金の残高が一致しない場合には、その日の売上は夜間金庫に預けるか、あるいは店の責任者がいったん閉店後に持ち帰り翌日整理をするか、代表者宅に届けさせるか等、現金の管理をどのように行っているかの説明を求められます。
もし、代表者宅であるならば、すぐに同行をお願いし、現物確認の調査を受けることになります。
現金にルーズな会社は疑われても仕方ありませんね。
飲食店や小売店の経営者は、従業員の不正行為の防止も兼ねてレジ等現金を扱う担当者を時間でシフトするなど、内部牽制には気を配っているはずです。
現金管理の責任者が親族関係者の場合、現金監査で現金が合わないとなると確信犯と見られてしまいます。
日頃の現金の管理状況、例えば、集金がある場合には、どの帳簿書類に基づいているのか、集まった現金は誰がチェックして最終的には誰に渡しているのか等について、調査官は根掘り葉掘り聞かれますよ。
調査官は意味もなく聞いているのではなく、説明に出てくる帳簿書類や手控え等を確認し、その全貌を把握するための端緒を探しているのです。
「最近のものしか残っていません」、「古いものは捨てました」と答える経営者もいますが、相手先に反面調査をすれば分かる話しです。どんなに面倒でも、結果が大変なことになるのが目に見えているのですから、日頃から帳簿残高と現金の確認は必ず行うようにしましょう。

調査ウラ話

業態の確認/喫茶店 その1

調査官は、喫茶店の調査を担当することになりました。喫茶店は、申告が適正に行われているか、帳簿を見ても比較対象物がないので、現金業種の中でも特に難しいといわれています。
一般的には、コーヒーの粉の仕入れ量から売上を推計することとなります。
調査官は調査対象の喫茶店がどのような営業を行っているのか、日頃の状況を確認することにしました。
平日、休日を問わず、また時間帯を変えながらお店に出向き、テーブルの数や1テーブル当たりの回転数、レジの状況、おしぼりやコーヒーの粉の仕入れ時間帯や仕入先など時間をかけて地道に確認していきました。
古い話で恐縮ですが、映画「マルサの女」で宮本信子がお客の数とりを行っていた場面を思い出してください。
調査官が特に重点を置いたのがレジスターの管理状況でした。
最近、混んでいる時間帯では、レジの箱を開きっぱなしにしてレジを打たず、お客さんにお釣りを箱の中からいきなり渡すという光景が多々見受けられました。
後でまとめて売上伝票からレジを打つのでしょうか。怪しいですね?

余談になりますが、ある調査官が、調査日の前日の売上伝票とレジのロールペーパーからレジの打ち直しによる売上除外の現行犯を捕まえたそうです。何で分かったのでしょう?
売上伝票は精算が済んだ順に刺していきますので、一番下は最初のお客さんで、一番上は最後のお客さんということになります。
レジのロールペーパーはどうでしょう。ロールペーパーの一日分は、売上伝票の逆で機械上、一番上の印字が最後のお客さんなのです。
調査官は、売上伝票の束とレジのロールペーパーの照合を行いました。
すると、売上伝票の最初のお客さんがロールペーパーの一番上に印字されているではありませんか。つまり、売上伝票をスタンドから抜いて、途中で売上伝票の一部を除外した後、そのまま一番上にある売上伝票から打ち直してしまったのです。
物理的に考えても、打ち直ししか考えられません!
経営者も観念し、売上の除外を認めたそうです。

話しを戻しますと、調査官は調査対象の喫茶店は終日同じ売上伝票を使用しているか。
レジの交替ははいつか、特定の時間帯(お客が集中する昼休みなど)のレジはどうしているかなど、毎日細かく念入りに観察を行ったのです。
これを業界では「内観調査」といいます。
また、喫茶店を数件ハシゴし、コーヒーの濃さを体で覚える勉強もしました。
コーヒーの粉1キロ当たりドリップ方式で何杯のコーヒーを淹れられるのか。110杯、120杯、130杯?行きつけの喫茶店にもご協力いただきました。
慣れてくると、ある程度当たるようになるのだそうです。さすが、プロですね。
さあ、下準備が整いました。いよいよお店で調査開始です。調査展開やいかに?

業態の確認/喫茶店 その2

調査官はお店に臨場し、さっそく責任者に当店のコーヒーはドリップ方式か、サイフォン方式かの確認を始めました。
ドリップ方式とのことなので、まずコーヒーを立てている現場を見せてもらうことにしました。これを業界では「現場確認」といいます。
ちょうど立てるところだったので、それを見ながら調査官は矢継ぎ早に質問をしています。

調査官当店ではコーヒーの粉1kg当たり何杯のコーヒーを淹れていますか?
責任者約100杯というところですね。
調査官金属のやぐらを組んで、ろ紙を上に巻き、コーヒーの粉をその中に入れて熱湯を注ぐ方法ですか。通称ドリップバケツで受けるのですよね。
責任者その通りです。詳しいですね。
調査官閉店時間にコーヒーが余ってしまった場合はどうされますか。
責任者廃棄処分にしています。
調査官そうですか。以前、同業の喫茶店に調査に伺った際の話しでは、翌日に沸かし直して流用しているのが通常だと聞いたことがあるのですが。
責任者・・・・・。

調査官はドリップで使ったドリップバケツを持ってきてもらいました。よく見るとバケツの内側に渋のような線がくっきり残っています。
毎日、同じ分量をとっているので跡がついているのです。
実際に計測してみたところ、コーヒーの粉1kgから約140杯がとれました。
開差は約40杯、単価が500円とすれば1回分のドリップで約2万円の売上計上もれが想定されます。
一日何回ドリップしているかで、コーヒーに関する売上計上もれの概算が把握できることが分かりました。

余談ですが、淹れたてのコーヒーと沸かし直しのコーヒーの見分け方があるのかをご存じですか。
淹れたての場合、ミルクをコーヒーカップの縁に沿って流してみると表面に薄い膜ができ、ミルクは沈みません、沸かし直しはドボンと落ちます。
調査官は別の日の開店直後に入店し、これを行ったところミルクはすぐに落ちました。
以上の事実を責任者に説明し、売上計上もれの事実を認めるよう根気よく説得したところ、根拠がここまで明白なことから観念し、売り上げ除外のすべてを調査官に話したそうです。
周到な事前準備と徹底した実態確認の成果が実を結んだ事案でした。
ちなみに、現金商売の調査は帳簿調査では実態を把握するのが難しいので、レジの管理状況等を営業時間帯や曜日ごとに観察するため客として店舗に臨場し、情報の収集を時間をかけて行うのが必須となっています。
実際にあった事例としては、特定の時間帯だけ売上伝票の色を変えており、実地調査の段階では、この伝票は破棄されていたため、現物がありませんでした。